お見送りの仕方はご家族によって形は違います。
もうすぐ母の日ですが、先日、心に残るお母様とお子様方のお別れに立ち合わせていただきました。
故人様は女手一つで2人のお子様の成長を見守っておられました。
昼夜問わず働き、優しいだけではなく厳しく叱るなど、父親の役目も果たしてこられたそうです。
自分のことよりもお子様優先。
経済的に苦しくても大学院へ進ませ、お子様が困らないようにと道を示してこられました。
息子様は年を重ね、ご結婚。
親になってみて故人様の強さ、優しさを実感したそうです。
打ち合わせでお話をしているときには、涙を流しながら
思い出を振り返っておられました。
何よりも女手一つで支えてくれた母への感謝。
「ありがとうの一言に尽きます」とおっしゃっていました。
費用はあまりかけられないとのことから、とてもシンプルなご葬儀。
その中でも気持ちを伝える方法はないかと、先輩に相談しました。
通常は、お別れの最後にお棺に出棺用のお花束をのせてお見送りしていただきます。
その花束を小さい花束2つに分けて、開式前にお子様に一つずつお棺の上に手向けていただくことをご提案しました。
「感謝を伝える式」。その意味合いを故人様はもちろん、ご会葬の方々にも伝えるためです。
花束はお子様が好きな色・花材でお作りし、お花屋さんにお願いして名前を添えていただきました。
開式し、花束を手向けていただく時、お子様の口から自然と言葉がこぼれました。
「おふくろ、はじめようか」
「今まで本当にありがとう」
思わず私までもらい泣きしそうになったほど、感情のこもった優しい声でした。
こちらから「声をかけてほしい」と依頼はしておりません。
しかしその言葉が、ご親族・ご会葬者の心を惹き付け、式場の雰囲気がかわりました。
全員の気持ちが故人様に向き、今この瞬間にしっかりお別れしておられるのだと感じさせられる時間でした。
後でご本人に伺ったところ、開式での言葉は意識して言ったものではなく
「そういえば、そんなこと言ったかも」と覚えておられないくらいでした。
お母様のお顔を見て、いよいよ始まるお別れの時間を前に本当に心から出た一言だったのだと思います。
気持ちを伝えることのできる環境をつくること。
それが私にできる精一杯のお手伝いだと実感したお別れでした。